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清掃工場だより10月号

 

 

水銀は人体に悪影響を及ぼすことから、水銀を含んだ有害性ごみは特別な処理をしなければなりません。北海道北見市にある野村興産株式会社イトムカ鉱業所は、日本国内で唯一、水銀リサイクルができる施設です。多摩清掃工場に集められた蛍光灯、乾電池も、イトムカ鉱業所へ送られ、処理されています。

「イトムカ」とは、アイヌ語で「光輝く水」という意味です。1936年の水銀鉱床の発見以後、1974年まで水銀を採掘してきましたが、採掘終了後は、水銀製錬の技術を活用し、水銀含有廃棄物を処理する事業を始めました。

夏休みに北海道へ行ったので、イトムカ鉱業所を見学してきました。搬入された水銀血圧計・体温計、蛍光灯、乾電池は、様々な選別や分離の工程を経て、非鉄金属、レアアース、ガラスの各原料へと再生されます。水銀は、再び蛍光灯の材料や、水銀試薬になるほか、歴史的建造物や漆器で使用する朱の原料になります。また、乾電池から回収した亜鉛はブラジルへ輸出され、コーヒー栽培用肥料の原料となっています。この肥料で育てられたコーヒーは日本にも輸出されており、地球規模のリサイクルが行われています。

案内してくださった中村さんが、「人の手が加わったものから水銀を取り出すことは、自然の鉱石と違い、はるかに手間がかかり、新しい製品に対応する技術を開発しなければならないので、大変です」とお話しされていました。多摩清掃工場も、新しい技術を取り入れながらリサイクルに取り組んでいかなければ、との思いを新たにする旅になりました。